イケメン 一家に囲まれて

「美容室とかでもいいのでは?」

「いいから早く」

ハサミを無理やり渡され、顔を近づけてきた。

後ろの髪も伸びているし、この際バッリ切ってしまおう。


「今日父さんと会うんだ…」

「そうなんですか…お仕事の話ですか?」

「いや、この家に帰ってくるんだよ」

ふーん…って私も会うのかな?

「僕はこの顔が嫌い…父さんと会うときしか髪を切らないんだ」

え?

なんか…私に話してくれているのかな?

「何故顔が嫌いかは聞きませんけど、隠さなくてもいいんじゃないですか?」

後ろ髪をいい感じに整え、前髪を切って行く。

「なんで、そう思うの?」

「せっかくイケメンに生まれたんですから、見せびらかせばいいのに」

「昔はできてたよ、今はできない」

昔に何かあったように、あれは言った。


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