涙色


その男の子に恨みがあったわけでも、特別憎かったわけでもない。


ただ、目の前にいたから突き飛ばした。


––––ガシャンッ


机とともに倒れたその子。


その子の頭からは血が出ていて。


『は!?ちょ、お前なにやってんだよ!』


『誰か先生呼んできて!!』


『ねぇ大丈夫!?』


呼びかけても反応しない彼。


『あんたのせいで!!!』


そうだよね、知ってる。


だって今私が突き飛ばしたんだもん。


ごめんなさい。


『お前みたいな汚いヤツなんて生きてちゃいけねぇんだよ!』


そうだよね。


全部全部知ってるよ。


私が汚いことも、いらないことも。


私は誰にも必要とされてないんでしょう?


その後すぐに先生が来て、男の子は病院に運ばれた。


後頭部を3針縫ったけれど命に別状はなかった。


お母さんとお父さんも呼ばれて。


いじめはひどくなって。


お母さんとお父さんも変わった。
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