涙色


『裕磨は–––––死んだのよ』


少し俯いて。


でも、しっかりとした声で麻結美さんはそう言った。


『し、んだ・・・』


私の口から漏れたその言葉は、自分でも聞こえないくらい小さくて。


そんな私に、麻結美さんは悲しそうに笑いながら、『また来るわね』と言った。


そして、病室から出ていった麻結美さん。


入れ違いに入ってきた病院の先生に検査され、私は1か月後に退院した。


病院に来た警察に、車の運転手の名前を聞いた。


その時には言葉が出なかった。


だって、その人の名前は。


『川崎誠-Kawasaki Makoto-』


私のお父さんだったから。


お父さんは、麻薬を使っていたらしい。


現行犯で捕まった。


私たちを轢いた時も麻薬を使っていたらしい。


すべて、お父さんのせいだった。


警察には、犯人が私の父親だと知られていた。


事件性も1時期疑われて、私も少し疑われた。


でも、私が裕磨の彼女だったことも含め事件性はないと言われた。


裕磨がいなくなったことで、私の世界はまたモノクロに戻った。


でも1度芽生えてしまった感情がなくなるのには時間がかかって。


今まで何も思わなかったいじめがとても辛くなった。
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