涙色


中3の7月。


ギリギリに保っていたお母さんが、とうとう壊れた。


お母さんは、近所の人に嫌がらせを受けていた。


友達に怪我を追わせた汚い私の母親で、人を轢き殺した人の妻だから。


あの日、私はいつも通りに家に帰った。


いつもは仕事でいないはずのお母さんがいて。


でも私は話しかけてはいけないから、そのまま部屋に行こうとした。


––––––それなのに。


『もういや。なんで私なのよ・・・!!』


突然お母さんが言葉を発した。


お母さんはこっちを向いて。


『なんであんたが生きてるのよ!!なんで、なんで・・・!!っあーもう!!』


お母さんは私の元に歩いてきて、手を握った。


『死んでよ!死んで死んで死んで死んで!!』


お母さんは狂ったように叫ぶ。


ねぇ、怖いよ。


お母さんどうしたの?


ねぇ、お母さん。


今までさんざん暴言をはかれたのに、私はお母さんが好きだった。


だって、家族だから。


どんな形であれ、私のおかあさんだから。


嫌いになんて、なれなかった。


お母さんは私の腕を掴んだままお風呂に入って。


湯船の蓋を開けた。
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