涙色
「夢羽はいらなくなんかない。汚くなんかない。夢羽はなにも悪くないんだよ。」
春輝が突然言葉を発した。
なんで、そんな事言うの。
全部私のせいなんだよ。
だってみんなそう言ってたもん。
なんで、急に違うこと言うの。
私が全部悪くて。
私は汚くて。
私はいらない子。
そうでしょう?
「夢羽は今までよく頑張った。もう自分を責めなくてもいいんだよ。」
そんなことない。
私は責め続けなくちゃいけない。
だって私は汚いから。
「・・・ち、がう。私は、いらない子なんだよ。汚いんだよ。」
私の口から出た弱々しい声。
「夢羽は必要だよ。・・・いらなくなんかない。汚くなんかない。」
「ちがう・・・。だって・・・!!私が男子を、怪我させた!!私のせいでお父さんは麻薬を使うようになった。裕磨だって・・・!」
だって私が悪くなかったら誰が悪いの?
誰かが悪い子なんだよ。
みんなが悪くないなら、私が悪いんだよ。
だって、全部私のせい。
「確かに見方によっては夢羽が男子に怪我させたかもしれない。でも、いじめられていた夢羽の方が怪我してるんだよ。心も、体も。」
私は悪くない・・・?
「そんなはず・・・」
「夢羽、傷つかなくていい。もう過去に縛られなくていい。–––––忘れる事はいいことじゃないけど、思い出にする事はいいことなんだよ。」
「思い出・・・」
思い出にする・・・?
それってつまり。
裕磨を過去に置いてくるってこと?
裕磨を忘れずに、前に進むの?
「夢羽、前に進んでいいんだよ。過去は変えられないから、思い出にしちゃえばいい。そんなこともあったなって、思うようにになればいい。」
「前に、進んでもいいの・・・?」
だって私はいらない子なんだよ・・・?
「うん。夢羽は過去に縛られなくていい。夢羽を縛るものなんて本当はないんだよ。」
「っうん!」
溢れそうになる涙を必死に堪えながら、私は笑った。