涙色


「夢羽はいらなくなんかない。汚くなんかない。夢羽はなにも悪くないんだよ。」


春輝が突然言葉を発した。


なんで、そんな事言うの。


全部私のせいなんだよ。


だってみんなそう言ってたもん。


なんで、急に違うこと言うの。


私が全部悪くて。


私は汚くて。


私はいらない子。


そうでしょう?


「夢羽は今までよく頑張った。もう自分を責めなくてもいいんだよ。」


そんなことない。


私は責め続けなくちゃいけない。


だって私は汚いから。


「・・・ち、がう。私は、いらない子なんだよ。汚いんだよ。」


私の口から出た弱々しい声。


「夢羽は必要だよ。・・・いらなくなんかない。汚くなんかない。」


「ちがう・・・。だって・・・!!私が男子を、怪我させた!!私のせいでお父さんは麻薬を使うようになった。裕磨だって・・・!」


だって私が悪くなかったら誰が悪いの?


誰かが悪い子なんだよ。


みんなが悪くないなら、私が悪いんだよ。


だって、全部私のせい。


「確かに見方によっては夢羽が男子に怪我させたかもしれない。でも、いじめられていた夢羽の方が怪我してるんだよ。心も、体も。」


私は悪くない・・・?


「そんなはず・・・」


「夢羽、傷つかなくていい。もう過去に縛られなくていい。–––––忘れる事はいいことじゃないけど、思い出にする事はいいことなんだよ。」


「思い出・・・」


思い出にする・・・?


それってつまり。


裕磨を過去に置いてくるってこと?


裕磨を忘れずに、前に進むの?


「夢羽、前に進んでいいんだよ。過去は変えられないから、思い出にしちゃえばいい。そんなこともあったなって、思うようにになればいい。」


「前に、進んでもいいの・・・?」


だって私はいらない子なんだよ・・・?


「うん。夢羽は過去に縛られなくていい。夢羽を縛るものなんて本当はないんだよ。」


「っうん!」


溢れそうになる涙を必死に堪えながら、私は笑った。


< 133 / 161 >

この作品をシェア

pagetop