涙色


「春輝、ありがとう」


私は春輝に送ってもらって、家に帰った。


いつも通り、インターホンがなるだけだと思っていた。


そう、思っていたの。


それなのにどうして、ここにいるの?


–––––お父さん。


だって。


私が鍵を持っているのに。


なんで、勝手に入っているの?


どうやって入ったの?


何をしに来たの?


家の前に行くと、鍵が開いていた。


閉めたはずの鍵。


恐る恐る開けてみると、知らない靴が置いてあって。


リビングには、お父さんがいた。


震える体。


怖い。


ねぇ、今更なに?


なんで、来るの?


せっかく居場所を見つけたのに!!


せっかく前に進めそうだったのに。


また、過去に引き戻される。


–––––違うね。


現実に、起こるんだ。


過去じゃない。


今から・・・。
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