涙色


あの日、お父さんが家にいた日から。


今日で5日が経った。


スマホは壊されて。


固定電話は線を切られて。


ドアの外側から鍵をかけられた。


その上、縄で腕と足を縛られて。


口にタオルをくわえさせられて。


手も足も動かせず、声も出せない。


お父さんは、毎日私のことを殴って。


もう心も身体もボロボロになって。


それでもやっぱり、助けて欲しくて。


私は縄を解こうとした。


「っ!」


ほどくことができた手の縄。


その次に、まず口でくわえているタオルをとって。


足の縄もとった。


自由になった体を動かして、どうやって逃げ出すかを考えた。


「っあ・・・」


ここはマンション。


つまり、隣の家とは壁一枚で


思い切り音を立てれば、気づいてもらえるはず。


大声を出せば聞こえるはず。


私はすべての窓を開けて。


ベランダに出た。
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