涙色


私は目が覚めてから3日後に退院した。


「夢羽っ!おかえり!」


春輝とともに倉庫に行ったら、みんなに「おかえり」って言われて。


自然と頬が綻んだ。


私の居場所はここにある。


私はいらなくなんかないし、生きていたらいけない人間でもない。


お父さんが間違っているんだ。


大丈夫。


みんななら私を必要としてくれる。


そう信じてるから。


「夢羽、気づけなくてごめんね」


春輝が悲しそうに言った。


春輝が謝ることなんかないのに。


春輝に続いてみんなも私に謝って。


違うの。


みんなが謝ることなんかないの。


全部お父さんのせいだから。


みんなはなにも悪くないから。


そう伝えたいのに伝えられないのは私が泣きそうになっているからで。


だってみんなが私を必要としてくれてるってわかったから。


溢れそうになる涙を堪えながら、私は笑った。


「必要としてくれて、ありがとっ!」


これは私の精一杯の感謝で。


今までで1番心を込めた「ありがとう」だった。
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