涙色
わけがわからないというような顔をしているソイツ。
「もういいだろ?お前の遊びは終わりだよ。」
そう言った木村亮平の声は、なにかを決意していた。
「り、亮平。なによ急に。遊びってなんのこと?」
ははっと乾いた笑いをした夏目明希の演技は、もう崩れかけていた。
「わかってんだよ。・・・お前が自作自演で夢羽にいじめられたって嘘ついたこと。」
「っなに言ってるの!?私いじめられてたんだよ!?」
「もう嘘つくなよ。」
「っそ、んな・・・」
夏目明希の目からポロポロと涙が溢れていく。
「・・・おい亮平。何言ってんだよ?明希が嘘つくわけねぇだろ?」
深瀬駿生の言葉を筆頭に、夏目明希を信じている3人が口々に言葉を発する。
「いい加減現実をみなよ」
初めて口を開いた石田響に、3人は目を見開いた。
「ホントは気づいてたんでしょ。」
こいつらは気づいていたはずなんだ。
だって本当に嫌いなら、関わらないと思うから。
それなのに、こいつらは必要以上に夢羽に関わった。
自分は正しいと思い込むために。
「・・・ごめんね。」
「・・・え」
突然謝った夏目明希にみんなが固まった。
「・・・みんなが、欲しかった。私ね、みんなのこと、"物"として見てたの。"人"じゃなくて。」
夏目明希の言葉に、赤石達は、戸惑っていた。
「ごめんって謝っても、済まされないことをしたの。自分のために、たくさんの人を傷つけた。途中でソレに気が付いて。・・・でも、みんなに言えなかった。」
目を伏せて、言葉を紡ぐ夏目明希は、酷く弱々しく見えた。
でも。
どんなに謝ったってダメなんだ。
だって終わってしまったことだから。
どうして途中でやめなかった?
言いにくいのはわかる。
けれど、人を傷つけたんだ。
途中でやめるべきだったのに。
夏目明希がした事は間違いで。
けれど、反省はしていた。
なぜこんなにもあっさりと認めたのかは知らないが、それでも反省している事はわかった。
演技なんかじゃなく、本気で。
ソレを感じ取ったのか、少し、木村亮平の雰囲気が暖かくなった気がする。