涙色
「ごめん。ごめんなさい。・・・私ね、もうここには来れなくなるんだ。まぁ、もう姫じゃなくなるんだろうけど。」
夏目明希の言葉にみんなが眉をひそめる。
どういうことだ?
来れなくなる?
来ないんじゃなくて?
「どういうこと?」
石田響が口を開く。
「・・・あのね、転校するの。スイスに。」
「・・・は?」
目を見開くみんな。
転校?
まぁ俺ら翠嵐には関係ないんだけど。
「・・・お父さんが、転勤することになったんだ。だからね、もう、サヨナラなの。」
「明希・・・」
夏目明希は眉をハの時にして悲しそうに笑った。
「今まで、ありがとう。」
そう言って、そうこの出口に向かって歩いていく。
壊れたシャッターの一歩手前で、立ち止まった夏目明希は、振り返った。
「・・・っ亮平!ホントに、大好きだったよ!気づいてたのに、今日まで一緒にいてくれて、ありがとう!」
ポロポロと涙をこぼしながら、必死に笑顔を作っていた。
夏目明希は、そう言い残して、倉庫から出ていった。