涙色


「・・・夢羽」


呟くように私の名前を呼んだ響に、みんなが視線を向けた。


「夢羽、響だけ許してくれないか?・・・ずっと、夢羽のことを信じてたんだよ。俺らにも言ってた。でもそれを、俺らは────」


「知ってるよ。」


「・・・え?」


響のことを許してくれと言っていた亮平の言葉を、遮る。


「・・・知ってた。響が、私のことを信じてくれてるんだって。だからね。────響のこと、嫌いじゃないよ。」


そう言って、微笑んだ。


「夢羽・・・。ごめん。ごめん俺。知ってたのに、それなのに、何も出来なくて。」


「響、もういいよ。桜嵐が、響の唯一の居場所でしょ?それなのに、桜嵐を裏切れるわけがない。────響のしたことは、合ってるよ。」


響には、両親がいない。


元々施設で育ったんだ。


引き取ってくれた人たちに、虐待されて、今は一人暮らしをしてる。


響が、私の味方になることは、簡単に言うと、居場所をなくすことと同じで。


私だって分かってたから、何も言わなかった。


響は間違ってない。


仕方が無いことなんだ。


私が響の立場でも、同じことをしただろう。


居場所を失いたくないから。


居場所を失うことの辛さを知っている響は、誰よりも私の気持ちを分かっているんだ。


だから、今そんなにも、辛そうに私を見ているんでしょう?


「夢羽、ごめんな。・・・今更だけど、ずっと信じてた。」


「・・・うん。」


ホントに、今更だよ。


仕方が無い。


けど、それでも。


信じて欲しかった。


信じて欲しいと思う私は、馬鹿なのかな。

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