涙色


「・・・みんなのこと、今は、嫌い。大嫌い。私のこと裏切って、捨てて。・・・私の過去を知ってたのに。」


言葉を紡ぐ。


ホントに、嫌い。


嫌いだけれど。


それだけじゃないんだ。


「嫌いで、大嫌いだけど。・・・みんなといるの、楽しかった。大好きだった。」


「夢羽・・・」


みんなの瞳が揺れる。


これが、私のホントの気持ち。


「・・・みんなに裏切られて、辛くて。嫌いになったけど。それでも、また戻りたいって、翠嵐に会うまでは思ってたよ。」


みんなのことが、大好きで。


すぐに嫌いになんてなれなかった。


「私を、最初に救ってくれて、ありがとう。」


私は桜嵐に、微笑みを向ける。


「・・・亮平」


これは、伝えたかったこと。


しっかりと考えて、出した答え。


「・・・私ね、亮平のこと好きだった。」


私の言葉に、この場にいる全員が目を見開く。


「大好きだったよ。ちゃんと、恋愛感情で。・・・今は違うけど。」


「夢羽・・・」


少し恥ずかしくなって、私は俯いた。


「俺も、好きだった。」


「・・・うん。私たちは、きっと、結ばれない運命だったんだよ。こうなる運命だったんだ。」


私は前を向く。


溢れそうになる涙を、こらえながら、満面の笑を向けた。


「・・・っ今まで、本当に、ありがとうっ!」


涙で、ぼやける視界。


目を凝らせば、桜嵐のみんなも、涙目になっていた。


「・・・春輝、もう行こう。」


「・・・うん。」


春輝に向かってそう言えば、微笑んで返してくれる。


「・・・じゃあね。」


私達は桜嵐の倉庫を後にした。
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