涙色
階段を降りて少し歩いたところにある空き教室。
そこに私は入った。
中に入ると誰もいなくて。
緊張が解けたのか。
それとも、過呼吸で体が限界だったのか。
私はその場に膝から崩れ落ちた。
「はっ、はあ、はあ」
苦しい。
息ができない。
目の前に広がる、真っ青な景色。
あの時と同じ。
ひとつ違うのは息が吸える場所にいるということ。
それなのに、息は何故か吸えなくて。
ビニール袋・・・。
意識が朦朧としていく中、ビニール袋を探した。
・・・あった・・・・・・。
それを口に当てて、息を整える。
「はあ・・・。」
息が落ち着いてから考える。
私の過去を全て知っているのに、あんなことを言うんだから、タチが悪い。
どうして?
私があの言葉を嫌っていることを知っているはずなのに。
仲間だったのに。
こんなにも一瞬で、忘れてしまうの?
それともわざとあの言葉を言ったの?
奏太・・・。
奏太はいつだって優しかったよね。
さっき、私が過呼吸になった時も、心配して手を差し伸べてくれた。
どうして手を差し出したの?
まだ信じてるから?
そうだと嬉しいな。
まだ、信じてくれている。
心の片隅で、まだ、みんなは私のことを信じてくれているんだ。
この時の私はそう信じていた。