涙色


誰も桜嵐の敵にはなりたくなくて、出来ていた暗黙のルール。


それは、"私に手を出さないこと"。


仮にも私は姫だったから、下手に手出しはできない。


もしそれで、桜嵐の反感を買ってしまったら。


自分たちの立場が悪くなってしまうから。


でも。


さっきの奏太の蹴りで、そのルールは崩れた。


だって、副総長である奏太が手を出したことで、桜嵐は本当に私のことを敵だと、仲間ではないと言っているのと同じだから。


今までは無視や悪口だけだったいじめが。


これから物理的なものに変わる。


さっきの奏太の一撃が、物理的ないじめ開始の合図となる。


ケラケラと笑う声が聞こえる。


もう嫌だ。


こんな生活したくない。


でも、耐えなくちゃ。


耐えるんだ。


私はそのまま家に帰った。

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