涙色


「帰るだけ。・・・ついてこないで。」


「うーん・・・。俺は倉庫に連れていきたいんだけどな。一緒に行かない?」


そう聞いてきた夏島春輝。


「行かない。」


「なんで?」


「もう嫌なの。」


「・・・なにが?」


「・・・なんでもいいでしょ。」


早く帰りたい。


しつこい夏島春輝を信じてしまいそうになる。


信じない。


結局最後は裏切るんだから。


「・・・夢羽?」


「・・・」


私は返事をせずに歩き出す。


「夢羽。・・・俺は裏切らないよ。」


「・・・」


"裏切らない"


その言葉に立ち止まる。


「俺は裏切らない。夢羽を1人にはさせないよ。」


「・・・口ではなんとでも言えるよね。」


「夢羽・・・!嘘じゃないよ。絶対!約束するから。勇気を出してみない?」


「絶対なんてこの世界には存在しないわ。」


裕磨だってそうだった。


だって。


ずっと隣にいてくれるって言ったのに。


絶対いなくならないって言ったのに。


今裕磨は隣にいないの。


いなくなっちゃったの。


"絶対"なんてなかったの。


"永遠"がないように。


"絶対"もないの。


「そんなの、信じてみないとわかんないよ。」


「・・・」


「俺だけでもいい。・・・確かに桜嵐に裏切られて、恐いかもしれない。でも、裏切らないから。だから一緒に倉庫に行かないか?仲間に・・・姫に、ならない?」


「っ・・・姫なんて、いや。結局裏切られて終わりなの。」


「そんなことないよ・・・!周りを見れば、絶対味方はいるよ!・・・家族とかに相談したの?1人じゃないよ!家にだって味方はいるよ」


家に味方がいる?


いるわけないじゃない。


独りなのに・・・。


「・・・いないよ。味方なんて。」


「え・・・?」


「家族なんていないわ。・・・味方なんていないの。・・・もう関わらないで。」


そう言って、私は家に帰った。


その後、夏島春輝が追いかけてくる事はなかった。

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