涙色
ドンッ
「っ!」
誰かにぶつかった。
「すみま、せ、ん・・・。」
「夢羽・・・。」
「夏島春輝・・・?」
なんでこんなところにいるの?
「ってめぇ!」
そうだ。
私は追いかけられてるんだ。
逃げなきゃ。
逃げたいのに。
夏島春輝に腕をつかまれて、動けない。
なに?
まさかあの男と仲間なの?
「夢羽、これ着てな。」
渡されたパーカー。
あ・・・。
私、下着見えてる・・・。
素直にパーカーを受け取る。
「あの男にやられたの?」
「うん。」
私が答えると、男の方を向いた。
なんだ?
「お前がその女の彼氏か?残念だけど、そいつ未練タラタラだぜ?」
そう言ってわらう。
「俺、彼氏じゃないけど。」
夏島春輝はそう答える。
「ふーん、まあいいや。でもよ、この時間に出歩いてるって事は、もうそいつ、汚れてんじゃね?それか、親に必要とされてないか。」
そう言ってまた笑う。
けど、その笑い声は突然止まった。
夏島春輝に蹴り飛ばされて、気絶したから。
夏島春輝はこっちを向いた。
でも、それに私は反応できない。
息が苦しい。
息が吸えない。
あの時と同じだ。
息が吸えるはずなのに。
"汚れてる"
"必要とされてない"
その言葉は、私に過去を思い出させる。
私のことを見て、走ってくる夏島春輝。
「夢羽!?大丈夫!?」
その言葉に返事をする前に、私の意識がプツンと切れた。