涙色


「だって、人に裏切られてるんでしょ?そのせいで辛い思いをしてきたんでしょ?・・・それなら、夢羽は裏切らないと思ったから。」


「・・・私だって裏切るかもよ?本当は桜嵐の噂が真実かもしれないんだよ?」


「そんなことない。だって裏切られることを嫌っている人が裏切ることなんて、ほぼ有り得ない。」


「でも・・・!」


「そう言っていつまで逃げるの?」


「っ逃げてない!」


「逃げてるんだよ。裏切られないように。傷つかないように。人と関わらなければ裏切られないから。」


「っ逃げて、なにが悪いの?裏切られないようにしてなにが悪いの?」


「悪くはない。逃げてもいい。けど、いつまで独りでいるの?寂しくないの?本当は寂しいんでしょ?」


「っ寂しくなんかない!!」


「いつまで強がるの?」


「強がってなんかない!」


「強がってるじゃん。助けてって。寂しいって。顔に書いてあるよ。」


「そんなわけ・・・」


「じゃあなんで泣きそうなの?」


泣きそう?


私が?


なんで?


私は寂しいの?


助けて欲しいの?


自分がわかんないよ。


「泣きたい時は泣いていいんだよ」


「泣きたくなんかっ」


泣きたくなんかない。


そう言おうとしたのに。


ポロポロと零れ落ちた涙。


「っ」


泣きたかったの?


ずっと。


「泣いていい。泣いた方が楽になるよ。」


そう言って頭をなでてくれた春輝。


「っふぇ・・・」


ポロポロと止まることを知らない涙。


「いいよ。今まで1人だったんでしょ?今までよく頑張ったよ。夢羽は」


「もう、無理しなくていいよ。もう独りじゃない。」


「ほ、んとに?」


「うん。」


「っふぇ・・・ぅぅ・・・あ、りが、と・・・」


春輝はなにも言わずに頭をなでてくれる。


その仕草に、安心した。


「ん、ありがと。もう大丈夫。」


「そう?・・・仲間のとこ行ける?」


不安そうに私を見る春輝。


「ん、行く。」


「ほんとに?」


「うん。・・・ペンダント、直してくれてるんでしょ?」


「うん。それがどうかした?」


「じゃあお礼言わなきゃ。」


「そっか・・・。あのさ、姫にならない?俺、翠嵐の総長なんだ。」


「・・・」


私は俯いた。


「・・・裏切らない?」


「うん。」


「・・・いなくならない?」


「うん。」


「・・・信じてくれる?」


「うん。」


「なにがあってもだよ?」


「うん。」


「・・・ほんとに?」


「なにをこわがってるの?」


「っ」


「でも・・・」


「じゃあ、会いに行ってみようか。会ったら変わるかもしれないしね。」


「・・・うん。」


そう言って、私たちは立ち上がりドアを開けた。
< 52 / 161 >

この作品をシェア

pagetop