涙色


短い沈黙のあと、不意に飛鳥が口を開いた。


「ピアノ弾けんだよな?」


「・・・うん」


なんだ?


さっき言ったことだよ?


「じゃあ弾けよ」


「・・・は?」


え、なにこの上から目線。


めっちゃムカつくんだけど。


人への頼み方を知らないのかな?


「弾けねーの?」


バカにしたように笑う飛鳥に苛立ちを覚える。


「はぁ?弾けるし!!そこら辺のよりも弾けるし!!」


「じゃあ弾けよ」


だから、なんでそんな頼み方なんだよ!


「あーもう!わかったよ!弾けばいいんでしょ!?」


「ああ」


なんだコイツ。


むかつく。


せいぜい私のピアノを聴いて驚けばいい!


私は鍵盤に手を置く。


「・・・何弾くの?」


「なんでもいい」


なんでもいいが1番困るんだけど。


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