涙色


少し悩んだ結果、私はドビュッシーの月の光を弾いた。


私の好きな曲だから。


「・・・へぇ。お前すげぇじゃん。」


「飛鳥でも人のこと褒められたんだ?」


さっきのお返しだ!


ばーか。


「あ"ぁ?」


「ひっ・・・こ、怖いから!!」


眉間にシワを寄せるのやめてぇ!!


「まぁいいや。」


あら、案外適当なのね。


「つーか、いくら弾けるっつっても、こんな弾けるとは思わなかったわ。」


なめんなよ。


「あら、そう思ってたなら残念。私中学生の時に、全国大会で優勝してるんだよね。」


「は・・・?マジ?」


「うん!」


ピアノだけはやめられなかった。


なにがあっても。


大好きだったから。



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