涙色


大好きだったの。


ピアノよりも裕磨が。


裕磨が、"ピアノを弾いてるときの夢羽が1番輝いてて好き"って言ってくれたから。


たまたま小学1年生からやっていたピアノ。


勉強でも、運動でも1番にはなれなくて。


ピアノだけが私の取り柄だった。


裕磨に聴いてもらいたくて。


なにがあってもやめなかった。


でも、裕磨がいなくなって、ピアノをやる意味がわからなくなってしまった。


だから、辞めた。


「どした?」


「ぇ、あ、え?」


「ぶっなんて声出してんだよお前。」


そう言ってケラケラ笑う。


「っ笑わないでよ〜!!ぼーっとしてたの!」


「だってお前、ぶっくくく、まぬけな顔してっククッ」


「〜〜〜っ!!!」


あーもうむかつくなぁ!


なんで笑うのよ!


「もう知らない!」


ばか!


飛鳥のばーか!


「言ってることも幼稚だな」


そう言ってまた笑う。


いいもんいいもん。


好きなように言えばいい!


無視してやるんだから!


飛鳥なんか。


飛鳥なんか、風邪で38度の熱出して、寝込んでろ!!


「ぶっおま、お前、思ってることも幼稚だな」


「はぁ?」


思ってることってなんだよ?


声に出してないんだから、わかんないだろ!!


「全部声に出てるぜ?ほんとまぬけだな。くくっ」


「〜〜〜っ!!!」


「熱出して寝込んでろって、ふっくく」


もうほんとに知らない!!


< 62 / 161 >

この作品をシェア

pagetop