涙色
「川崎夢羽です。」
まず、名前。
次は、桜嵐のこと。
「私は、桜嵐の元姫です。元姫について、たくさんの噂があると思います。」
大丈夫。
真実を言うだけ。
やってないって。
言うだけだから。
「でも、それは全部嘘です。」
それを聞いて、ざわめく下っ端たち。
「私は、夏目明希ちゃんをいじめていません。」
下っ端たちのざわめきは収まらない。
「今すぐ私を信じるのは無理だと思います。私も、人を信じるのが怖いです。」
一呼吸おいて、また話し出す。
伝えたい言葉を紡ぐ。
「人を信じる前に、また裏切られるんじゃないかって、どうしても考えてしまいます。」
下っ端たちが、息を呑むのがわかった。
「正直、桜嵐を追い出された時から、もう人は信じないようにしようと思いました。」
本当にそう思った。
どうせ裏切られるなら、信じなければいいって。
私は自分が壊れない道を選んだ。
「でも、春輝たちと会って、簡単に覆されました。気づいた時には、もう信じてました。」
会ってまもないのに。
信じないって決めた直後だったのに。
気付いたら信じてた。
「私は、翠嵐の姫になりたいです!信じろとは言いません。でも、私はみんなを信じたいです。」
しっかりと息を吸って、さっきよりも大きな声で。
「私を、翠嵐の姫に、っ仲間に、してください!」
そう言って頭を下げた。