涙色
「なにやってるの?」
「透理と飛鳥が私のこと鬼って言って逃げたから追いかけてんの!んで、佳正と雅人もそれに巻き込まれたんだよね・・・ってえぇ!?だれ!?」
だれ!?
質問されたから答えたけどさ、顔みてないし!
私は誰の質問に答えたの!?
声のした方を振り返る。
「誰ってお前なぁ・・・」
そう言って苦笑いをこぼした春輝がドアの前にいた。
「は、はは春輝!?」
驚きすぎて恐ろしくどもりましたよ!
「いや、うん?俺だけどさ、なんで幹部室の中で鬼ごっこをしてるわけ?」
「ひぃっ!」
「ごごごごめんって!な!?」
慌てて謝る透理と飛鳥。
「俺はそこの3人に巻き込まれただけ。」
「同じく」
そう言った佳正と雅人は、自分は悪くないと訴えているようだった。
・・・ん?
「ちょっと待ってよ。なんで私も悪いみたいになってんの?佳正。」
そうだよ。
私だって巻き込まれたんだよ。
あのふたりが鬼だなんて言うから!
「え、夢羽も悪いでしょ。」
え!?
ちょっと待ってよ雅人。
私も悪いの!?
私も被害者だわ!!
「ふーん。・・・で?始めたのは誰なの?」
春輝ってこんなキャラだったの!?
大魔王!?
いやもはや閻魔様!?
「それは・・・なぁ?」
「あぁ。それはだって・・・」
「「こいつ」」
顔を見合わせてから声を揃えて指を指した透理と飛鳥。
こいつって誰だろ?
そんなことを思いつつ、透理と飛鳥の指の先をたどる。
「・・・ぇえ!?ななななんで私なの!?」
「「俺らは鬼って言っただけだし?」」
だから自分は悪くない、と?
おかしくないかい?
お2人さん、よく考えようよ。
おかしいと思わないかい?
挑発した人は悪くないのかい?
・・・おかしいじゃないか!!
「・・・はぁ。もういいよ。飛鳥、透理。全部片付けといてよね。」
ため息をついて春輝は指示を出した。
「「なんで俺らなんだよ!?夢羽は!?」」
「・・・口動かす前に手を動かしてくれるかなぁ?」
こわっ。
春輝も佳正に負けず劣らず怖い、と。
覚えておかなくちゃ。
そのあと2人が黙ってすべてを片付けた。