涙色
「その前にもいろいろあってね、信じてたのはその人だけだったんだ。・・・なのに、いなくなっちゃったの。」
友達なんていなかった。
作れなかった。
欲しいと思ったこともあったけれど。
みんな私を見ると逃げていく。
全部全部お父さんのせい。
裕磨が死んだのもお父さんのせい。
「高校に入って、人を信じられなかった。・・・ううん、信じたくなかった。桜嵐に会うまでは。」
右手でペンダントを、左手で手摺りをつかむ。
「最初は桜嵐に入りたくなかった。裏切られるのが怖くて。いなくなってしまうのが怖くて。でもね、"俺らは絶対裏切らない。""夢羽のことを捨てないよ"って言ってくれたの。」
それがとても嬉しかったんだ。
だから。
「私は信じちゃったの。信じなければ良かったのにね。」
そう。
信じなければ感情なんて芽生えなかったのに。
また傷つかなくて良かったのに。
私が信じてしまったから。