涙色


その震えはどんどん大きくなって。


立ち上がることもできなくなって。


その場にうずくまる。


怖いよ・・・。


誰か助けて。


ガタガタと震える体。


それを止める術を私は知らない。


そのときだった。


–––––ガラッ


ドアが開いた。


そこに立っている人は制服を着ていた。


それなのに、顔だけが仮面をかぶったようにあの人になる。


また、殴られる・・・?


イヤだ。


「夢羽!お前なんでこんなところにいんだよ?」


その声にビクッと体が揺れる。


ガタガタと体が震える。


「お前どうした?」


近づいてくるその人。


「や、やだっ!寄らないでっ!」


怖い。


「おい?夢羽?」


「あ、ぁ・・・。」


私は口答えをしてはいけない。


なのにさっき、わたしは口答えをしてしまった。


「ぁ、ごめんなさい、口答えして・・・!ごめんなさい。許して・・・おと、さん」


「夢羽?俺だよ!飛鳥!お前の父親じゃねぇ!」


なにかを言っているけれど、何を言っているのかわからない。


聞こえない。


ねぇもう殴らないでよ。


––––––お父さん。




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