【短】線香花火
線香花火
夜空に打ち上げられた
花火を見て思う。


大きな打ち上げ花火も
好きだけど、

小さな線香花火は
もっと好き。


暗闇に小さな2つの光りが
静かに辺りを燈す。
私と彼で線香花火を1本づつ。


「綺麗だね」

なんて言いながら
2人で線香花火を楽しんだ。


「ねぇ、線香花火くっつけようよ」

彼は「えー」とぶつくさ言いながらも
私の線香花火と彼が持つ
線香花火を
くっつけた。


重なり合った線香花火は
段々と大きくなってゆく。
そして小さな光が地面に落ちると
それは楽しいひと時の
終わりを告げる。


「あーあ、終わった…」

残ったバケツの中の花火を
切なそうに見つめると
彼は

「また今度な」
と大きな手の平で
私の頭をぽん、と撫でた。


私は彼とする線香花火が
素朴だが、
大好きだった。
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