変わらない世界
「此処は最初にこれとこれを計算して..」

柴田は自分で持ってきた要らないメモ用紙を取り出し、有希から借りたシャープペンで書き込んでいく。
有希はそれをじっと見ながら頷いている。
教室には柴田と有希の2人しかいないため、辺りはぐんと静かだった。
時折、有希が問題に答えられなくなると沈黙が流れるがすぐに柴田が教えてくれる。
だから2人の間に気まずい雰囲気が流れることは無かった。


「こんなの習ってないですよー」

分からない問題があると有希は度々言う。
半分、冗談交じりとゆうことは柴田も分かっているだろう。
そんな柴田は、

「君は3年生でしょ、この問題は1年で習う問題のはずだけど」


と苦笑いして言った。


18:30分。
やり始めてからかなりの時間が経っただろう。
ちらりと時計を見た柴田はすぐに有希に目をやった。

「じゃあ後30分間、徹底的に問題やるか」


そんな柴田の言葉に有希は切なさを感じるのだった。
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