変わらない世界
各教室にパネルを並べ終えると、今日の係会のノルマは何とか終えることができた。
最後に明日の係会の内容を後輩達に伝えている時に、教室のドアが開いた。


「あーごめん、仕事が長引いて遅れた」


そう言いながら、教室に入って来たのは柴田先生だ。ジャージ姿でポケットに手を入れている様子は生徒のお手本にはけして好ましくない。

私は心の中で
(遅いです…)
と呟いた。

ふいに時計を見ると係会終了時刻まで、残り5分だった。

私は急いで係会終了の号令をかけた。


ガタガタと椅子を引きずる音と生徒達が「疲れたー」等という言葉が溢れる中、私だけは柴田先生のところに足を運ぶ。

今日の係会の報告や、明日の係会での内容を先生に伝えるためだ。





「せんせ…「柴田先生!」




私の声は一瞬で宮川に掻き消された。
唖然としている隙に宮川は私と柴田先生の間に割って入ってくる。

柴田先生は声のする私の方を見たような気がしたが、今は宮川と話している。

「宮川先生、どうしました?」

「明日の係会の内容をお知らせしようと思って」


今も先生は私の方を見ることはない。
私は静かに教室を出た。
先生が宮川を選んだと思うと辛くて。

教室を出た後、私は後ろを振り返ることはなかった。ただひたすら、前を向いて廊下を歩いた。
< 59 / 106 >

この作品をシェア

pagetop