変わらない世界
最近、話しをしていても
先生はちゃんと聞いていないみたいだ。


「先生!最近、頭痛とかお腹痛くなることが減ったんです」

「そうなんですか、それはよかったですね」

階段の踊り場で柴田先生を見つけた有希がいつにもまして、明るい口調で話しかけるのだが、
柴田は話しの途中、階段を上がりながら有希に話しをする。

その様子が気に入らなかった有希は

「今度は先生にうつっちゃいますよ!」
と言った。

先生は一瞬、苦笑したがすぐに階段から姿を消していった。

また一人、有希は静かな廊下に取り残されることになる。


(あ…行っちゃった)

この前と同じような罪悪感が心の中に残る。
泣きそうなのを必死にこらえた。
それでも嗚咽がもれた。
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