町はずれの映画館
2.
*****




「君は……本当につき合いが良いよね」

 美奈の心も知らずに、数歩後ろを歩く親友は彼氏とイチャイチャしている。

 必然的に美奈は圭と並んで歩く事になった……と言うよりも、最初からそう仕組まれていた。


「保護者同伴だと呼び出された時には、どうせこんな事になると思っていたけれどね」

「はぁ……」

 溜め息混じりの声音は低く、疲れているような気怠さを残し、尚且つ面倒臭さも感じさせる。


「だいたい、肝試しなら夏にするものでしょう」

「あ、いえ……肝試しではなくて……」

「なくて……? 何。こんな商店街の先に、今もその映画館があるとは思えないんだけどね?」

 圭が言うのも、最もだと思った。

 美奈が小さい頃には『いこい商店街』と掛かれた看板があったが、『い』の文字が風化と共にどこかへ行ってしまって、『こい商店街』になっている。

 そもそも、その商店街には開いている店が一つもないから必然的に辺りは暗い。

 申し訳程度に残っている街灯が照らし出すシャッターは、殆どが錆び付いてがたついているか、辛うじて残っていてもスプレーで落書きされているかのどちらかだ。

 確かに、これでは肝試しと変わらない。


「……君は大丈夫なのか?」


 ぼんやりと考え事をしていた美奈は、圭の言葉に我に返った。

「え。何が……や、なんて?」

「君は、怖いものは大丈夫なのか、と聞いたんだよ。人の話はちゃんと聞いた方がいいよ?」

「……はぁ」

「まぁ、大丈夫ならいいんだけど。耳もとで悲鳴をあげられるのは僕の好みじゃないからね」

 好みとか、そういう問題なんだろうか。

 ふっと考えて、圭の質問に首を傾げる。


「怖いもの……って、何か関係あるんですか?」

「有名じゃない?」

「有名?」

 オウム返しに聞いた美奈に、圭がちらっと視線を寄越してから唇の端を上げる。

 少し邪悪な笑みだ……。

 美奈が思わず警戒した時、

「僕が学生だった頃から有名じゃないか……」

 ニヤニヤと、ますます邪悪に微笑む圭。


「A町の外れにある映画館……幽霊が出るって」
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