徒花と蝶
その言葉が口から出た瞬間、ハッとした。
何を言っているの、と。
私は荷物をまとめて、『ごめん、私帰る』と言って立ち上がった。
コーヒーを奢ってくれたお礼を言って、立ち去る。
後ろから、祐輔は追っては来なかった。
こんな自分勝手な言い分を、彼はきっと相手にはしない。
…もう、会わないんだから、いいじゃない。
そう自分に言い聞かせて、実家までの帰路を歩いた。
「…だから、祐輔には会いたくなかったんだよ」
その言葉は誰も聞いていない。
けれど、口にするのも嫌だった。
…だから、あまりいい気分にはなれなかった。