徒花と蝶
道端の花より、大輪の華になりたかった
実家に帰ると、お母さんやお父さん、大学生の弟がいて。
私を見るなり、「マジで帰ってきた」と言う可愛げのない弟。
母や父は「おかえり」と言ってくれて。
「ただいま」
何年ぶりの『ただいま』だろう。
その言葉を言っただけで心が、ぽかぽかした。
父親は私を見て、『最後に会った時よりも随分と垢抜けたな』と言った。
都会の女になったでしょ、なんて言いながら、私は仏壇のある部屋に行き、線香をあげる。
―――帰ってきたよと言う報告をした。
居間の方に行くと、
「予定よりも随分と遅かったわね」
「あ、…祐輔とバッタリ駅で会って…」
連絡してなかったと思い出す。
すると、母は『そう』と二つ返事で何も聞いては来なかった。
…そうよね、もう成人を迎えた社会人のいい大人だもの。
そんなにグダグダと説教しないわよね。
少し寂しく思いながらも、何やら私に向かって言っている弟の相手でもしようかと思い、弟の方に向く。
「何て?」
「だから!彼氏はできたのかって!」
「随分とマセガキになったのね、余計なお世話よ」
「じゃあいないんだ?」
「……いないわよ、そんなもの」
私のその雰囲気に、これ以上は危険だと思ったのか、さすがの弟も聞いては来なかった。