徒花と蝶
蝉やカエルの声、穂が風に揺れる音。
数年前までは、田舎の象徴だと言って嫌いだったのに、今はその音が心地いいと思っている。
懐かしい存在になっていることに、都会に染まったんだなあと感じた。
それに、時間を気にせずにのんびりとできるのは何時ぶりだろう。
時計だって、カバンの中に仕舞っている。
それがどれだけ気楽なことかを、しみじみと感じた。
実家付近の年季の入ったスーパーに入る。
私が幼い頃からあるスーパーで、よく母と葵と一緒に来た。
玩具目当てのお菓子を持って来ては、すぐに返されてたっけと思い返すととても懐かしい。
すると、
「もしかして、花楓?」
「あ、はい…」
そう言って振り返ると、金髪のギャルみたいな恰好をした女の子が立っていた。
「あたし、亜由【あゆ】!覚えてる?」
亜由と聞いて思い出した。
「覚えてるよ、久しぶりだね」
さすが田舎クオリティだな、と思ったのは言うまでもない。
都会では絶対に声はかけないし、掛けられることも少ない。
どこで見られているか分からないなと思いながらも、私は彼女と少し話をする。