徒花と蝶
「何、久々に帰ってきたの?」
「うん、成人式の後は帰ってないかも」
「マジ?まあでも、あたしたちの代の伝説だよ」
「なに、伝説って」
「高校だってこの辺で一番の私立行ったじゃん?大学なんかもう誰でも知ってるような都会の大学行ったでしょ?」
『うちの親がどれだけ花楓を褒め称えてたか聞かせてあげたいよ』と言った亜由に、そう言えば彼女はこういう子だったなあと思い出す。
中学まで同じだった彼女。
何の努力もせずにただ、目立ちたい。
そんな感じの。
私は馬が合わないなと思ってあんまり関わらなかったけれど。
私は『そんなことはないよ』と笑って言っておいた。
だって、私は絶対に負け犬になりたくなかったから。
絶対に都会に出たかったから。
だから、必死で頑張ったんだもの。
伝説と言われて、当たり前じゃないとは思わなかったけれど、気分は良かった。
誰だって、人より優れたいと思わないわけない。
「ママ!お菓子買って」
そんな声が聞こえた。
ママ?
私は視線を下げてみる。
すると、ツインテールの小さな女の子がいた。