徒花と蝶
私はしゃがみ、目線を亜由の子どもに合わせる。
そして、
「私は、あなたのママのお友達の岸田 花楓。あなたは?」
そう言うと、その女の子はパアッと明るい笑顔を私に向ける。
「リサ!」
―――タイムリーな名前がその女の子から出た。
…リサ、か。
その名前を聞いた瞬間に、きっと作った笑顔が崩れたと思う。
それでも笑顔を必死で作った。
「…そっか、リサちゃんか」
『可愛い名前だね』とリサちゃんに言うと、『ありがとう』と言って、亜由の後ろに隠れた。
『ごめん、リサ、旦那に似て人見知りなのよ』と亜由は言って、『じゃあリサ、一個だけ買ってあげるから選んで来な』と言って、リサちゃんは嬉しそうに頷いてお菓子コーナーの方に向かった。
絶対に、人生を成功させたい。
そう思って世間を斜めに見降ろして、必死で今のキャリアを積んだ。
…その結果がこれだ。
きっと、そんな私に対するバツが今来たんだろう。
そうとしか思えなかった。