徒花と蝶
自力で家に帰ったわけじゃないと言うこともちゃんと分かっていた。
けれど、母は『親切な人が送ってきてくれたのよ』としか言わなくて。
私もどうでもよかったから『そう』と二つ返事でスルーしていた。
…まさか、祐輔だったとは。
「今、初めて知ったよ」
「そうなの?付き合ってるわけじゃなかったんだ。じゃあ安達が未練タラタラなんだね」
……そんな訳ない。
だって、彼は私に対して愛想は尽きてるはず。
未練なんて、これっぽっちもないに決まってる。
だから簡単に私を手放したんだから。
「ごめん、亜由。私おつかい頼まれてて」
「あ、ごめん。長話しちゃったね」
『じゃあ、またね』と言って、別れた。
そして私は味噌と豆腐を一丁買って、スーパーを出た。
私のこの格好はどうやら浮くようで、『どちらから来たんだい?』とパートのおばちゃんたちに聞かれた。
…葵に行ってもらえばよかったなあと思いながらも、私は帰路を歩く。