徒花と蝶
私は先先歩くと、葵が少し足早に私の隣に来る。
そして、
「何、姉貴。おかしいモンでも食ったの?」
と、いつもの言い合いにもっていこうという風な考えが丸見えの葵の言葉。
それと共に私の顔を窺う。
…目の前にはその言葉とは真逆の顔があるけれど。
変わってない弟の姿に、私は嬉しくもあり、寂しくもある。
だって、
「……そうかもね」
私は、昔とは違うから。
…昔からそうだ。
葵は何でも私に喧嘩を吹っかけてくるくせに、私の些細な変化には敏感だ。
だから、私が本気で怒り始めたら逃げるし、泣きそうになったら若干でも引く姿勢を見せる。
本当に良くできた弟だ。
…私には勿体ないぐらいの。