徒花と蝶




「…さ、早く帰ろう。お母さん待ってるし」



私は少し歩くペースを上げる。
すると、



「…何かあったんだろ、姉貴」



葵が真剣な声で言う。
けれど、『何にも』と言って歩みを進める。


ねえ、葵。

世の中には知らなくていいことがあるんだよ。

だから、お願い。



「…あね―――」

「…大きくなったね、葵」
「は?」



何言ってんの、姉貴と言うような顔で私を見る。

葵の言葉の先が、分かっていたから。
私は遮った。




< 22 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop