徒花と蝶
「葵は、彼女いるんでしょ?」
「何だよ、いたら悪いかよ」
『いるから、地元の大学選んだんだよ』と言った葵。
そう言えば、親から『葵が言うことを聞かないの』と連絡を受けたことがあったなあと思い出す。
多分、ちょっと前の私ならバカじゃないの、と思っていた。
実際にその話を聞いた時には思ったし、本当に彼は私の弟か?と疑ったこともあった。
都会の大学に行ける頭を持っていて、経済的にも許されて。
なのに、何でって。
でも、今は違う。
「…それが正解だよ、葵」
「え?」
「…幸せにしてあげなよ」
きっと葵の記憶の中にある私なら、そんなことは言わなかっただろう。
でも、十分すぎるほどわかったから。