徒花と蝶
私は母に『ちょっと電話してくるから』と言って、足早に2階の自分の部屋に行った。
玄関にいても、聞こえる楽しそうな話声。
私が帰ってきた時とは大違いの。
葵も、……父も。
歓迎されているのはどちらだと思うと、私は自傷気味に笑った。
…気付かなかった。
私は、ここにも居場所がなくなっていたこと。
ねえ、そんなに東京に行ったことが悪かったの?
家を出たことで、居場所がなくなるほど、家族って脆いものだったっけ?
…私は精神状態がおかしくなりそうだった。
だから余計に思った。
……会いたくない。
人の、幸せな姿なんか。
静かに階段を上がって、自分の部屋に行く。
…すると、驚いた。
……私がいた時とは配置が違っていることに。