徒花と蝶
「帰省か?」
「うん」
「いいな、都会の会社は早いんだな」
「有給使ったの」
そうなんだ、と彼は言った。
私は一番彼に会いたくなかった。
……どうして、帰ってきて早々会ってしまうんだろう。
「祐輔は?仕事中?」
「いや、ちょっと野暮用をしに学校に行ってて、その帰り」
「…そっか」
学生時代、彼はサッカーをやっていた。
大学も続けるんだとばかり思っていたけれど、彼は続けると言う選択はしなかった。
『高校教師になりたい』と言って、地元の大学の教育学部に進学した。
そして教員免許を取り、採用試験も一発合格で教師になるという夢を実現させた。
本当に、彼はすごいと思う。
……私なんかとは大違いだ。
私は『じゃあね』と言って去ろうとしたけれど、彼が引き留めた。
『時間があるならせっかくだし、話そう』と。
私は二つ返事で頷いていた。