徒花と蝶
私は目覚めると、あれから一時間はゆうに経っていて。
下から『花楓、夕飯出来たわよ』と言う声が聞こえた。
……行きたくない。
けれど、行かなければならない。
私は重たい腰を上げて、部屋を出た。
階段を下り、居間の方に向かう。
すると、
「はじめまして、お姉さん!」
可愛らしい女の子がいた。
今時風の、髪をばっちりセットしたこの目の前の女が、葵の彼女なのだろう。
4人掛けのダイニングテーブルには、上座に父、隣が空いていて、母が座るだろう。
そして目の前の席に葵とその彼女が座っていた。
そして、一脚だけ別の椅子があって。
そこが……私に用意された席なのだろう。
そう思うと、顔に笑顔が作れなくなっていた。
けれど、そんな大人げないことはできない。