徒花と蝶
…昔から変わらない。
私よりも彼の方が、一緒にいる時間を大切にしてくれる人だった。
よく友人からも、『花楓が羨ましい』と言われていたなあ、と思い出す。
別に私も彼も、特別可愛いとか、カッコいいと言うわけではない。
彼は、サッカーと言う才能があったけれど、私に至ってはごく普通の、平凡な人間。
それでも、付き合っていた時間は幸せだった。
私たちは、祐輔の案内で近くの某コーヒーチェーン店に入った。
『へえ、こんなところに出来たんだ』と漏らせば、『ここら辺も結構都会になったんです』とおどけたように言った。
「何飲む?」
「私はラテかな」
「大人だな」
「何、まだコーヒー苦手なの?」
「うるさい」
そんな会話でさえも、懐かしくて。