徒花と蝶




私の横を走るとき、睨まれたのは言うまでもない。

彼女の心配よりも、私は、温厚な母にあんなことを言わせてしまったことがショックだった。


私は、本当にわがまま娘だ。

…いい年して、何やっているんだろう。
そう思ったら、泣きそうになった。



「母さん!何もあんな言い方…っ」



彼氏である葵が母を窘めようとする。



「母さん言ってたわよね?お盆前から花楓が帰ってくるから、奈々ちゃんと会うなら外で会ってって」



知らなかった事実に、私は驚いた。

…そうだったんだと思った。
母がそんなに私のことに対して気を使っていたくれていたという事実に、嬉しくなったのは言うまでもない。



「言ってたけど…っ」
「奈々ちゃんがずっと花楓に会いたがっていたのを知ってたからだよな、葵」



あくまでも葵の彼女の方の肩を持つ父さんに、私はもう辛くて辛くて仕方がなかった。



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