徒花と蝶




ねえ、お母さん。



「花楓が無理して作った表情に、アンタたち気付いてたんじゃないの?!」



今まで、帰って来なくてごめんなさい。



「そんなことも分からないなんて、父親失格よ!」



大切なものを見失ってた、代償がきたんだよ。

…なのに私は被害者面して、…挙句の果てにはこうして、お母さんを悪者にしてしまった。


…なのに、どうしてだろう。
嬉しくて仕方がなかった。

お母さんが、私の、…お母さんであることが。


涙が止まらなかった。
嗚咽が、止められなかった。

私は階段の陰に隠れて、泣いていた。

すると、



「…花楓、行くよ」



母が私の腕を掴み、玄関を潜る。



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