徒花と蝶
種が残せるなら、それでいい




母と二人来たのは、近所のファミレスだった。

私も良く東京では利用する、お気に入りのチェーン店だった。


店員が『何名様ですか?』と聞かれると、母が『3人です』と言う。

私は驚いた。
間違えたのかな、と思ったけれど違うようだ。

『また後で一人来るので』と言う母に、一体誰が来るのだろうと思ったけれど、私はもうそれどころじゃなかった。

席に通されると母は、


「吐き出しちゃって、何も胃に残ってないでしょ?食べなさい」



と言って、メニュー表を私に渡す。

私は一番後ろのデザートの欄を出す。
普段なら絶対にこんな時間にこんな甘いものは食べない。

けれど、今日は食べちゃおうかな、と選び出す私。



「太っちゃうわよ、花楓」
「いいの、偶には!」
「そう言っては、葵とデザート食べてたわね。…昔から」



葵は腹が立つぐらい食べても太らない。
まあ、成長期だったと言うこともあったのだろうが、いくら食べても横ではなく縦に成長をしていた。

甘いものに目がない私の前で、外食に行っても遠慮なしに食べまくる葵につられて、私も食べていた。

そんな日々も、懐かしい。



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