徒花と蝶
「今日は特別なの」
『私、このバニラハニーデニッシュにしよう』そう言って、店員を呼んだ。
母はドリンクバーだけ。
「もう一人って、誰が来るの?」
「まあ、来てのお楽しみよ」
「…ふうん」
『それよりも、母さんに東京の話を聞かせてよ』
そういう母に、私は苦笑いで頷いた。
…いい話ばかりではないから、出来るだけいい話を抽出した。
まあでも、……母には話そうと思った。
「……実はね、」
そう言って、私の不倫話を始めた。