徒花と蝶




きっと怒られるだろうと思った。
しかも会社の上司だ。
絶対にいい顔はされない。

それを覚悟して初めから最後まで、話した。

すると、



「……さすが都会ね」
「え?」
「若いんだし、そういう経験もいいんじゃないかしら」



いい訳ないでしょ、と思いながらも、拍子抜けした。
絶対に怒られると思ったから。

…そう言えば、昔からそうだった。

父は『いい高校に行って、いい成績を収めて、いい大学に行きなさい』と言う教育方針だったけれど、母は『今時学歴社会とは言えないんだし、あなたは女の子なんだから、好きなようにしたらいいのよ?』と私には言ってくれていた。


そんな母がいたから、私は自由にのびのびと進路を選択できたのだけれど。



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