徒花と蝶




少し無言が流れていたけれど、祐輔が口を開く。



「おばさんに頼まれてたんだ」
「…え?」
「2、3日前だったかな。『花楓の様子がおかしいから、今度帰省した時に話を聞いてやってくれ』って」



タイミングが良すぎるとは思ったけれど、まさかこういう流れだったとは。

そう思いながらも、ちょっとだけ運命なんじゃない?とテンションが少しだけ上がっていた私が恥ずかしくなった。


まさか、母が祐輔にそんなことを頼んでいたとは思いもしなかった。



「…迷惑かけてごめん」



私がそう言うと、祐輔は『何で?』と言う。



「何で、って…」



迷惑以外の何物でもじゃない。
元カノの厄介ごとに付き合わされるだなんて。

私が逆だったら絶対に迷惑だもの。

いくら人がいい祐輔だって、そんな迷惑だって思わないはずがないじゃない。


けれど、それを言葉にはできなかった。

…情けなさ過ぎて。




< 56 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop