徒花と蝶
冴島さんが、本当に愛している人は誰かが再び明確になった。
…それで、吹っ切ることができるだろうと思ったのは言うまでもない。
自分の旦那に不倫相手からの電話に応じてもいいかと言われる妻の気持ちが私には分からないけれど、…本当に申し訳のないことをしたと、今なら心から謝れる。
…そして、
<スピーカーにした>
という声が聞こえる。
「…リサさん、…岸田です。本当に今までごめんなさい」
自分でも驚くほど落ち着いた私の声に、…これなら言えると思ったのは言うまでもない。
「リサさんと結婚していると知っていながら、冴島さんと何度も夜に会った」
今までの贖罪をする。
わざと、言葉にした。
祐輔がどんな顔をしているかは私には分からないけれど、…いい気はしないだろう。
でも、それでも。
私に勇気が欲しかった。