徒花と蝶
「でも、履き違えないでほしいのは、冴島さんから愛を貰ったわけではないと言うこと。人の温かさは貰ったけれど、私は、愛はもらうことができなかった」
そう。
偽りの愛を手放す勇気が。
今までだって、何度もやめようと思った。
こんな関係、誰も幸せになれないってことも、分かっていた。
でも私は、冴島さんから与えられる優しさに甘えていた。
その優しさが、愛だと勘違いをして。
本当の愛を、私は知っている。
…それだけで、生きていける。
もう、悲しみに暮れなくていい。
「…リサさんには申し訳ないけれど、本気で私、リサさんから冴島さんを奪おうって思ってた。それくらい、好きだと錯覚していた」
私がそう言うと、冴島さんが『花楓…?』と呼ぶ。
「もう、私を名前で呼ぶのは止めてください。冴島部長」
私に有給で長期休暇を取らせたのも、彼だった。